点滴 (2020年3月16日)


いっぽ(犬の勇太)は点滴を始めた。腎臓のため。腎臓がかなり悪い。前の検査でも悪かったが抗がん剤を優先したのだ。この癌は悪性で、治癒はなく小さくさせて、共生きなのだ。今回の検査の結果で、抗がん剤を減らして、腎臓を守ることを優先した。この抗がん剤は、効果は抜群だが内臓へダメージも与えたのだろう。これでまた癌が暴れるかも。でも、もう強い薬はこの体には無理かもしれない。
そこそこに食べるから、点滴をしながら癌の動きを見るしかない。少しずつ力がなくなっているが、痛みがないようにケアしながら、見届けていくしかない。
点滴はありがたいことに、病院ではなく家でできるのだ。皮下点滴で一回に100ccだからどうってことない。今は便利なものができているものだと感心する。ありがたいのは薬でも、食事でも受け付けなくなれば、この点滴剤に混ぜて投入できることだ。癌で苦しむことはさせたくないからだ。勇太は病院に留め置くのが難しいワンちゃんだから、この点滴の方法ならかなり延命ができるだろう。
幾度か聞いたのは水だけ飲んで10日生きたとかだ。この病院は積極的な延命措置をしてくれるのだと思う。後はこちらが望むかどうかで、動物治療の方法は進歩していることを感じる。ただ、進歩の分、金がかかる。大体3週間分の薬と検査で3万円だ。保険もないし、人間よりも高い費用だ。でも生きられるだけ生かそうと思う。私にはいっぽしかいないのだから。でも病院に行くのも大変だ。混むので2時間から3時間もの時間がとられる。
一日おきの点滴だ。今日が初日。以前に他の病院でこういった点滴は見ているので何ら問題はない。ただ人間のに比べ、少し不潔だと感じる。以前違う病院では注射器を机に置いて使った医者もいた。
点滴は首のあたりの皮膚がダブダブしている場所をつまんで皮下注射をする。犬は何も感じないらしくおとなしくしている。皮膚に刺す針は使い捨てだが、点滴剤を吸い取る注射器は5度も使いまわしをすることが少し気になる。その注射器の針を外して、針のついた細い管を取り付け点滴をする。
病院に行けないほど弱ったらどうしようと考えていたから、この点滴の方法は煩わしいけれど、やるだけのことはやってみようと思う。

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おもらし (2019年11月15日)


おもらしを始めた。甲斐犬は部屋内ではしないのだが、病気のせいだろう。したければ動作で教えるが、多分無意識に漏れてしまうのだろう。腫瘍が膀胱を圧迫しているのかもしれない。お漏らしは厄介だ。フロアが汚れ不潔になる。トイレもやたら近くなっている。


勇太は赤ん坊になったのだ。おむつをお腹にまいて生活だ。そうすればお互いにきれいな生活ができる。人間も老いが進めばおむつの世話になる可能性はある。勇太だけの問題でない。

勇太は比較的元気だ。多分食べるからだろう。私は食いつきそうなものをやたら探してあげてみるのだ。犬用の牛乳は好きだ。パンも好きだ。無塩のバターを塗ってやる。煮干しやおかかも、おかか飯だ。これで食べることは何とかなるだろう。

病気については、あの病院はもう無理だ。人間として信用できないので、いよいよ評判の良い所に行く決断をした。やたら混むから、できれば普通のところで余命を静かにまっとうさせたいと考えていたが、知っている人がそこにかかっていてよかったという。時間によってはさほど混まないともいうから、そしてそこなら雑な扱いもないだろうから行くことにした。

これで私の心も少し軽くなった。ひどくなり、痛がったりしたらどうしようと考えていたからだ。ここは患者に寄り添うというから、無理なことはしないで淡々と老犬の生き方をさせてくれるだろう。

悪性腫瘍 (2019年11月18日)

その病院は熱心な医者だが、検査に勇太は参ってしまったようだ。腹部の超音波検査では犬を仰向けにするが、勇太は絶対にそれは嫌だ。それを大人が数人で力づくでしたものだからひどすぎる。検査の方法が分かったのは翌日来るように言われて、再び同じ検査をするのに私が中に呼ばれてそれがわかった。勇太は絶対嫌だという。私が頭を押さえてそのままの姿勢でした。スキャナーを腹部にあてて映像を見るのだ。

勇太は悪性腫瘍だった。医者は情熱家で完治しないままでも、腫瘍を小さくし余命を伸ばすことを熱心に考えている。私は無理はしないでそこそこにと考えているが、この腫瘍は食欲不振を招くそうで、またきつい検査もあって食欲がゼロに近かった。何とか少し食べて、薬が大切というから何とか飲まして、それで食欲が戻るのを期待している。見殺しはできないからだ。何とかエサに食いつくように誠意努力している。薬を無理に飲ませるのもそのためだ。食べなくては死んでしまう。どうしても食わないというならそれも定めだろう。

食欲がなくて入院とはいかない。勇太は私のそばが良いから離されたら吠え続けて無理なのだ。甲斐犬は一人にしかなつかない、そんな犬種なのだ。それも定めだろう。勇太は腫瘍ができやすいタイプのようだ。それも定めだ。死ぬかもしれない。心が寂しくなる。

芙蓉が初冬の庭に一つの花弁に赤白を欲張って咲かせている。同じ敷地の部屋では一つの存在の命が危ない。自然の営みは非常に冷徹に淡々と各々の存在が自らの主張を披歴しているように見える。美しく花を咲かせるもの、寿命尽きるかに食事をしないでじっと横たわっているもの、私はさまざまなものの営みにかかわっている。それが人間だ。

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針縫う (2020年2月29日)



いっぽ(犬の雄太のあだ名)は闘病中だ。私はその対応で悪戦苦闘している。最初は食欲がなくて困り果て、これでは死ぬなと思うほどだった。病院を変え、そこで良いお薬をいただいたせいか食べ始めた。ただお薬代がとても高い。まあ命には代えられえない。ただ薬が利尿剤の働きをして、更に膀胱の神経もやられているせいか、おしっこがほぼ二時間おきだ。それでもおもらしをする状態で常におむつをしている。うんちも踏ん張りがきかないので肛門に少し残っていたりするから、尾っぽを持ち上げ肛門を点検し拭く。一時拭きすぎて肛門の周りがただれた。その尻尾だがいつもピンと立っていたのに、癌のせいで股の間にくるまっているから、うんちのしぐさの時には尻尾を持ち上げてやる。
ある日、教会関係者から7歳の犬を誰か飼ってもらえないかという相談を受けた。唐突なようだが、その教会に私は呼ばれて話に行ったことがあり、私の飼い犬の話もしたことが縁になっていたのだ。飼い主はそのお姉さんだが、妹の宗吾(仮名)さんが窓口なのだ。その犬種は甲斐犬だ。私の心は動いた。今の犬はもう長くはないので、飼う選択肢はあるが、ただ私も年で、その犬が15歳のころは、私はよぼよぼで面倒を見れるかという危惧はあった。それが問題なのだ。
その犬が他所に行く理由もそこにあったのだ。主は年配で散歩のときに、急に引っ張られて頭を打ち、脳挫傷を生じ、それが原因で死亡したのだった。奥さんでは飼いきれないので里親を探すことになったのだ。
家内は絶対反対だ。それはわかる。今の甲斐犬は家内にはなかなか慣れなくて苦労したのだ。今は食事やちっこで苦労している。気をつけないと部屋でおもらしがある。二時間ごとに外に出てちっこをさせ、そこに水を撒く。玄関から素早く出ないと、そこでちっこをしてしまうのだ。癌で膀胱の神経がマヒしているのも、そういった現象を引き起こしているようだ。食欲がない時は、家内や私は肉などを素茹でして、ちぎってあげる。病院は混むし、車でしかいけないから陣取りのために早めに行き一時間は待つ。
こういった事情だから、無理なのは承知している。私は心で「飼いたいなー」と思うことによって、心を慰め、心でそのワンちゃんと遊んでいるのだ。一度見に行きたいと思っても、家内は情が移るから駄目だと宣言す。
里親を探すことにした。まずうちの犬病院に張り紙をお願いした。うまい具合に提供側と受け取り側のお見合いが成立した。ところが翌日になって、元の飼い主の姉の方に戻すことになった、と宗吾さんから電話があった。引き受けた側が返してきたのだ。私はその話にガクッときた。引き受けて、翌日に返すとはあまりに勝手な振る舞いだからだ。
まあ危惧がないわけではなかった。なぜならその犬は成犬の甲斐犬だからだ。病院の張り紙でまりや食堂へ来た人は、今まで何匹も飼ったようで手馴れた様子だった。一緒に来た娘さん(おばさんだが)は「かわいい犬だった」、と張り紙を見た感想だが、私はその写真のワンちゃんの顔を見て、とても気性の強い甲斐犬という印象を受けていた。私は山本(仮名)さんに甲斐犬は基本的に気性が荒く、私や家内も何回も噛まれたことを話したが、意に介さないようだった。
引き取ったその夜、家族が集まりわいわいしていた時に、突如犬が飛び上がり、娘さんの腕に噛みついたのだ。救急車で病院に。7針ほど縫う傷だった。その事件で奥さんは飼うことを断固拒否したのだった。その気持ちはわかる。だがその甲斐犬は悪くはないのだ。私の場合でも、何気なくそばを通っただけで噛みつかれ、非常に立腹したことがある。家内などは幾度も噛まれて用心した。それが甲斐犬なのだ。甲斐犬は野生に近い犬種だから警戒心が強いし、人に慣れないのだ。
その主にはなついたようだが、他とはうまくいかなかったようだ。それがまた甲斐犬なのだ。主と認めた一人しか慣れないのだ。我が家でも娘が孫を連れてきた場合でも、常に私は警戒している。いつ何時彼女らに噛みつくかもしれないからだ。いつぞや孫が手を出したら噛みつかれ、指から血を流してしまった。山谷ではボランテアが何人も噛みつかれ、あるボランテアは乳のあたりをぱくりやられたこともあった。いっぽは今、老犬、癌で弱っている。これでもやはり甲斐犬だ。家内が不用意に手を出すものならガッと噛みつこうとする気性は弱らないのだ。
この甲斐犬の飼い主を探してほしいと再び電話があり、とある里親団体を紹介することにした。まりや食堂の半専従者が飼った犬は、その団体の斡旋で手に入れたからだ。残念ながらそこは里親を探すだけで、飼えない犬を引き受ける団体ではないようだ。そこで、東京都動物愛護相談センターを紹介した。甲斐犬を理解する良い飼手が見つかることを願うのみだ。

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